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2025.12.02

【完全解説】地方創生×eスポーツの成功戦略|実例・メリット・課題を網羅!


1. スポーツと地方創生の相性が良い理由

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「eスポーツ(エレクトロニック・スポーツ)」とは、コンピューターゲームやビデオゲームを使った競技を、観戦・配信・大会として楽しむスポーツの一形態であり、2024年時点で世界の市場規模は約20億ドルを突破。日本国内でも競技人口は約750万人(2023年時点/KADOKAWA Game Linkage調査)とされ、着実に"社会インフラ"へと成長を遂げています。

一方で、地方では人口減少や若者の流出、高齢化、空き施設の増加といった課題が顕在化し、地域の活力低下が大きな問題となっています。このような状況下で、オンラインを基盤とするeスポーツは、地理的制約を受けにくい「都市集中を打ち破る手段」として注目されています。

さらにeスポーツは、ICT(情報通信技術)・教育・観光・福祉といった周辺領域とも親和性が高く、地域課題を横断的に解決する可能性を秘めています。だからこそ、eスポーツは地方創生の文脈において、極めて有効な"次世代の社会資源"として再評価されつつあるのです。

2. 地域活性化につながる5つのメリット

2-1. 若者の流入と地元定着

地方創生の根本課題の一つが、若者の都市部への流出です。総務省の統計によれば、20代前半の転出超過率が最も高いのは地方圏であり、特に中山間地域では、若年層の人口減少率が毎年5〜8%台に達する地域もあるとされています。これは、就学・就職・ライフスタイルの選択肢が都市部に集中していることが一因です。

しかし、こうした流れに対抗する手段として、eスポーツが"都市に行かなくてもつながれる""地域でも自己表現できる"という新たな可能性を提示しています。
たとえば、全国の高校を対象に実施された調査では、eスポーツ部や同好会を設置している高校の約85.1%に大会参加実績があることが明らかになっており(NASEF JAPAN)、すでに教育現場では広がりを見せています。

こうしたデジタルを通じた活動の場は、地域にいても仲間とつながり、自己表現の機会を得られる環境を提供します。eスポーツは、若者が地元で夢を描き、仲間と活動できる"動機"を生み出す仕組みとして、地域定着を促す新たな文化資源となりつつあるのです。

2-2. 雇用創出と地域ビジネスの活性化

eスポーツの普及は、地方に新たな雇用と産業機会をもたらす可能性を秘めています。大会の企画・運営、映像配信、実況・解説、ネットワーク保守、デザイン制作など、関わる職種は多岐にわたり、これまで地域に存在しなかったスキル需要を生み出しています。

たとえば、香川県高松市では、スタートアップ企業が商店街の空き店舗を活用し、eスポーツカフェを運営。若者の雇用の場としてだけでなく、周辺店舗の来客数増加や地域の回遊性向上にも貢献しています。

また、地域ブランドとeスポーツを組み合わせたビジネスモデルを構築できれば、外部からの投資誘致や地場産品のPRにもつながります。このようなデジタル産業の誘致は、若者の地元定着や地域経済の再生に直結する、地方創生の重要なエンジンとして注目されています。

2-3. 高齢者医療費の抑制と予防医療への貢献

eスポーツは若者の文化と思われがちですが、近年では高齢者の健康維持や介護予防にも有効であることが、国内外の取り組みから注目され始めています。特に、キーボードやコントローラーを操作する行為は、判断力・反応速度・集中力などを必要とするため、認知機能の維持に寄与する可能性が指摘されています。

海外においても、高齢者の社会参加やウェルビーイングの向上を目的としたデジタルゲーム活用の動きが進んでいます。AARP(全米退職者協会)の「Gaming and Aging Study 2023」では、ゲームが高齢者に認知的刺激を与え、社会的つながりを生む可能性があると報告されており、将来的には抑うつや孤立感の軽減、さらには介護予防への波及も期待されています。

このように、高齢者向けのeスポーツ体験は、単なる娯楽を超えて、心身の活性化や地域参加のきっかけにもなり得ます。地域社会における"アクティブエイジング"を支える新たな手段として、今後ますます注目が高まるでしょう。

AARP(全米退職者協会)

2-4. 異世代交流と地域コミュニティの再構築

地方では高齢化とともに、「世代間の分断」や「地域コミュニティの希薄化」が進んでいます。こうした課題に対し、eスポーツは**異なる年齢層が自然と関われる"共通の遊び場"**を提供することで、世代の壁を越えた交流のきっかけになっています。

例えば、東京都の「多摩・島しょ広域連携活動調査報告書(2022年)」では、eスポーツが福祉・教育・多世代交流の分野で活用されているという結果が報告されています。これにより、子どもや若者が高齢者とゲームを通じて関わる機会が増え、家庭や学校では得られにくい"地域の大人との接点"が創出されています。

また、北海道釧路市では、三世代で参加できるeスポーツ大会が開催されており、祖父母と孫が同じチームでプレイする姿が地域メディアでも話題となりました。このようなイベントは、高齢者の社会参加を促進する一方で、子どもたちにとっても安心して頼れる存在とのつながりを築く場になっています。
このような取り組みは、高齢者の社会参加を促進すると同時に、子ども世代にとっても"地域に頼れる大人"とのつながりを築く場となります。結果として、日常的な助け合いや子育て支援、防災など地域力の底上げにも貢献します。

eスポーツは、デジタルを通じた"新しい縁側として、コミュニティ再構築の実践モデルになり始めているのです。

2-5. 地域の利便性と暮らしやすさの向上

eスポーツを軸とした地域施策は、直接的な経済効果にとどまらず、間接的に「暮らしやすさ」の質を高める副次的効果も生み出しています。特に、若者や子育て世代の地域定着が進むことで、教育・医療・福祉など、生活基盤となるサービスの整備や改善が自然と加速します。

たとえば、eスポーツイベントの開催を契機に、公共施設での通信環境の整備や、フリーWi-Fiの導入、地域交通の見直しなどが進んだ自治体もあります。これらの改善は、地域住民だけでなく、観光客や関係人口にとっても利便性の向上につながります。

また、eスポーツを通じた異世代交流の促進により、"顔の見える関係性"が育まれることで、子育てや介護といったライフステージの課題に対しても、地域内で支え合う基盤を築く助けになります。

このようにeスポーツは、地域社会の機能や世代を滑らかにつなぐ"デジタル時代の潤滑油"的存在になりつつあるのです。

3. 全国のeスポーツ導入事例データベース

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3-1. 自治体による主導型事例

自治体が主導するeスポーツ事業は、行政の調整力と地域資源を活かし、地域課題に即した形で導入しやすいという特徴があります。実際の事例では、導入の「きっかけ」や「組織間連携のプロセス」が明確に構築されています。

たとえば、北九州市(福岡県)では、「小倉城eスポーツフェスティバル2024」が市の主導で開催されました。石垣に大型映像を投影し高校生7チームが対戦、一般参加型体験ブースも設けられ、町の賑わい創出と若年層の参加機会拡大を目的としています。参考URL

このように、自治体が前面に立つことで、地域住民の理解を得やすく、公共施設の利活用や予算確保もしやすいため、スピーディかつ継続的な取り組みが可能になります。

3-2. 学校・教育機関との連携事例

eスポーツの地域導入において、教育機関との連携は「人材育成」と「若者の地域定着」を同時に実現する重要な戦略です。多くの成功事例では、教育現場のニーズと地域社会の課題を橋渡しする形で構築されています。

たとえば、神奈川県横須賀市では、「YOKOSUKA e Sports Project」の一環として、2019年から市内高校へのeスポーツ部設置と高性能PCの無償貸出を実施しました。希望校へのサポートを通じて、全国大会出場校を多数輩出し、若者の学びと地域参画を促進しています。参考URL
また、全国規模の調査によれば、高校生のeスポーツ部活動や授業実践が広がっており、2022年には2,060校・約6,728人が大会に参加しているデータもあります。

このように、教育機関を起点としたeスポーツ導入は、地域にとって「学び × 地元で働く・活かす」の構造をつくる上で、有効な手段と言えるでしょう。

3-3. 民間企業主導での成功事例

eスポーツと地域活性化の融合は、民間企業による柔軟でスピード感ある展開によってさらに広がりを見せています。特に、地域資源と連携した独自性の高いプロジェクトが、地域ブランドや経済波及効果を生んでいます。

たとえば、富山県滑川市では、株式会社AFRAS(本社:東京都)が地元自治体・住民と協力し、民家を活用したeスポーツ×コミュニティ拠点「FUSION」を開設。子ども向けeスポーツ教室、プロチームとの連携、住民とのゲーム交流イベントなどを通じて、地域の新たな学びと交流の場を創出しています。参考URL

また、京都府亀岡市では、サンガスタジアム by KYOCERAに併設する「e-SPORTS ZONE」や「e-SPORTS CAFE」を含む複合デジタル体験エリアが民間企業により整備され、eスポーツ、AR/VR体験、コワーキングを融合した地方創生モデルが展開されています。
これは、若年層の定着促進、観光の再定義、ICT人材育成という複数の目的に対応した先進的事例です。参考URL

さらに、石垣市(沖縄県)では、民間企業と市が連携し、観光×IT人材育成×eスポーツを複合化したプロジェクトを推進中。交流拠点の開設、プログラミング・映像編集講座、eスポーツ大会の開催などを通じ、地元中高生を中心に地域活性と人材育成を図る取り組みが進められています。参考URL

このように、民間企業主導のeスポーツ導入は、行政にはない柔軟な発想やビジネス的視点を地域にもたらします。特に、"エンタメ+教育+観光"という多層的な戦略構築が可能となり、地方創生における新たな突破口として注目されています。
民間企業ならではの市場分析力とマーケティングスキルにより、eスポーツを"収益化できる地域資源"として昇華させる力が強みです。地方創生においても、行政とは異なるアプローチで成果を上げている事例が増加中です。

3-4. 住民参加型イベントの好例

地域に定着するeスポーツの取り組みには、住民が主役となる「参加型の仕組みづくり」が欠かせません。単にプロチームの試合を観戦するだけではなく、誰もがプレイヤーや運営スタッフとして関われる場があることで、コミュニティの一体感と持続性が生まれます。

例えば、釧路市(北海道)では、「eスポーツイベント」が地域交流拠点で定期的に開催されており、子ども・学生・地域住民が集まる場として機能しています。デジラポ+1 このような「みんなで作るeスポーツイベント」は、地域住民が主役となる地方創生の好例と言えるでしょう。 参考URL

このように、eスポーツを通じた共創型のイベント設計は、地域に根ざした持続可能なまちづくりの実践モデルとなりつつあります。

4. 成功事例に学ぶポイントと共通項

4-1. 地域資源の"再編集力"

地方創生においては、よくある課題は、「お金がない」「場所がない」「人手がない」。そんなときに効果を発揮するのが、"今あるものを活かす"という考え方です。限られた予算・土地・人材の中でどのように新しい価値を生み出すかが問われます。
成功事例の多くでは、「新たに作る」のではなく、地域にすでに存在する施設や空間を"再編集"して活用する発想が鍵となっていました。
例えば、使われていない建物や施設を少し工夫してeスポーツの会場にしたり、既存の集会所をデジタル対応にアップデートすることで、新しい交流やイベントの場が生まれています。こうした「再編集力」は、地域の個性を活かしながら、最小の投資で最大の効果を生む持続可能なアイデアです。

4-2. コミュニティとの共創姿勢

地域にeスポーツを取り入れる時に大切なのは、施設やイベントを"上から与える"のではなく、地域の人たちと一緒につくっていく姿勢です。
単なる観戦者や参加者ではなく、住民自身が企画・運営に関わることで、みんなが関われる"地域のイベント"になります。
このように、住民と共に創る姿勢こそが、eスポーツを地域文化として根づかせる原動力となるのです。

4-3. 教育・人材育成との接続

eスポーツは今、若い世代が社会とつながる新しい「学び」と「職業体験」の場としても注目されています。映像編集、配信技術、イベント運営、チームづくりなど、さまざまなスキルが必要とされる分野なので、学校と地域が連携してカリキュラムをつくる事例も増えています。
このように教育とeスポーツが融合することで、「地域で学び、地域で活かす」人材育成の構造が実現し、若者が地域の未来を担う存在として育つ土台が築かれているのです。

4-4. 小さく始めて、着実に育てる

eスポーツを地域に導入する際、いきなり大規模な施設や大会を設けるのではなく、「小さく始めて段階的に育てる」アプローチが多くの成功事例で採用されています。たとえば、商店街の一角でイベントを開いたり、地域の人が集まりやすい公共施設でゲーム体験会を行ったり。これは、限られた予算や人材の中で、地域に合った形を見極めながら柔軟に対応できるからです。
地域の人の反応を見ながら、ゆっくりと規模を育てていく"スモールスタート"の発想が、多くの自治体で注目されています。

4-5. 目的を「エンタメ以上」に明確化

eスポーツは楽しいものですが、「楽しい」だけでは終わらせないことが成功のカギになります。 eスポーツの導入が成功している地域では、単なる娯楽やイベントではなく、「若者を呼び戻したい」「観光のオフシーズンに人を呼びたい」「地域に新しい仕事をつくりたい」など、地域課題の解決手段としての明確な目的が設定されています。この"エンタメ以上"の視点こそが、取り組みの意義を広げ、持続可能性を高める鍵となっています。
このように、「誰のために」「何のために」導入するのかを明確にし、地域の未来像と結びつけて設計することが、eスポーツ導入の成功に欠かせない要素です。エンタメを超えた"地域戦略" 、"まちづくりの道具"としeスポーツをいかに位置づけるかが、今まさに求められています。

5. 【注目事例集】地方でのeスポーツ活用実例

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(1)富山県:補助金制度で広がる「行政支援×地域主導モデル」

富山県では、eスポーツを通じた関係人口の創出と地域経済の活性化を目的に、「eスポーツ関係人口創出事業補助金」制度を整備。県内の市町村が独自にeスポーツイベントや施設整備を行う際に補助を受けられる仕組みを構築しており、行政主導での支援体制が明確に整えられた稀有なモデルだ。これにより、県全体でeスポーツを活用した地域振興への動きが加速しています。
また、滑川市では、古民家などの地域資源を活用した「BURNING CORE TOYAMA GAMING BASE」を整備し、若者の居場所づくりと地域活性を目指す取り組みを展開。プロeスポーツチームとの連携により、地域の子どもたち向けのeスポーツ教室や、地域コミュニティとつながる機会を創出されており、地域に根ざした継続性のあるeスポーツ拠点として注目されています。
※参考:MATCHA 富山県公式サイト

(2)宮崎県高原町:マイクラ教育×地域参画モデル

高原町では、小中学生に人気ゲーム「マインクラフト(教育版)」を用い、町の未来を考えるワークショップを開催。町の仮想空間を構築し、遊休地や公共施設の利活用アイデアを子どもたちが提案するなど、地域の課題を可視化しながら若者の地域参画を促進する取り組みです。新たな「ゲーミフィケーション × 地方創生」モデルとして注目を集めています。※参考:宮崎日日新聞

(3)群馬県:常設拠点から広がる「地域共創×学生参加型プラットフォーム」

群馬県では、常設型のeスポーツ施設「Gunma eSports」を中心に、学生や企業、地域住民が自由に交流・体験できる場を提供しています。デジタル技術の活用による地域コミュニティの再構築と、若者を中心としたIT人材の育成を目指しています。施設はeスポーツにとどまらず、地域の新たな情報・文化発信の拠点としても機能しており、多様な世代の交流を生み出しています。※参考:群馬県eスポーツ推進ポータルサイト

(4)三条市(新潟県):福祉と融合「高齢者×世代間交流eスポーツ」

三条市では、高齢者を対象にしたeスポーツ体験イベントを実施し、健康寿命の延伸と多世代交流を図るユニークな取り組みを進めています。子ども世代との共同プレイを通じて、世代間のつながりや地域の共助意識が醸成されており、「福祉×デジタル」の好事例として評価されています。※参考:三条市公式サイト

(5)石垣市(沖縄県):観光×教育×IT「島から始まる多機能eスポーツ戦略」

石垣市では、IT人材の育成と観光振興の両立を目指し、地元企業やeスポーツ団体と連携した「eスポーツによる地方創生」プロジェクトを推進しています。交流拠点の設置に加え、プログラミングや動画編集といったデジタルスキル教育も導入し、観光地の新たな価値創出につなげています。eスポーツを総合戦略の柱とした先進的な取り組みです。
※参考:マイナビニュース NASEF JAPAN

(6)京都府亀岡市(京都府):スタジアム再活用「観光拠点×若者誘致×DX」

亀岡市では、「サンガスタジアムbyKYOCERA」にeスポーツ・VR・コワーキングスペースを導入し、都市部からの企業誘致や若年層定着を狙う複合施設を整備しています。これにより、地域における雇用創出とにぎわいの創出を両立させるデジタル地域創生モデルが確立されており、公共インフラを有効活用する好例として注目されています。※参考:HALF TIMEマガジンNASEF JAPAN

(7)別府市(大分県):温泉と融合「宿泊体験型eスポーツ観光モデル」

温泉地・別府市では、eスポーツと温泉を組み合わせた「観光×デジタル」戦略を展開。LANパーティや滞在型イベントを通じて、若者層やIT層の新たな誘客を実現しており、観光オフシーズンの集客対策としても成功を収めています。地域資源とデジタル文化を掛け合わせた地方創生の好事例です。※参考:大分経済新聞

(8)佐賀県:eスポーツでつなぐ教育×企業×地域の未来

佐賀県では、eスポーツを核に教育機関・企業・行政が連携し、持続的な地域活性化を推進しています。
代表的な取り組みが「SAGA e-Sports Boot Camp Project」で、高校生を対象に、実況・配信・映像制作などを体験できるプログラムを展開。技術だけでなく、チームワークや地域との関係構築など"地域で育て、地域で活かす"人材育成を実現しています。
また「ALL-SAGA eスポーツコンソーシアム」も設立され、県・企業・教育機関・自治体が連携し、佐賀をeスポーツ先進県として全国に発信しています。単発のイベントに留まらず、組織横断的な地域戦略として体制を整え、長期的な地域ブランドの確立を目指した体制づくりが進められています。 ※参考:Boot Camp事業(佐賀県公式)コンソーシアム設立(佐賀県公式)

(9)北海道釧路市:三世代がつながる「住民共創型eスポーツ」

北海道釧路市では、eスポーツを活用して地域全体を巻き込む"三世代交流イベント"を定期的に開催。行政と地元NPO、学校、商店街が連携し、子ども・保護者・高齢者がそれぞれの役割で大会や体験会に関わっています。
特に注目されるのが、「高齢者が孫にゲーム操作を教わる」「保護者がスタッフとして運営参加する」など、プレイを通じて"世代間の信頼関係"が自然と育まれている点です。
また、イベントの運営に地元高校生も参画することで、若年層の地域参画意識を高め、継続的な活動へとつながっており、小規模・ローコストながらも、住民と共創しながら"地域文化"としてeスポーツを根付かせる先進事例として、全国的にも注目されています。※参考:一般社団法人 釧路青年会議所

(10)福井県:福祉包摂の先進例「高齢者・障がい者×誰もが楽しめる体験会」

福井県では、高齢者・障がい者・子どもたちが一緒に参加できるeスポーツ体験イベントを開催しています。福祉政策と地域活性化を融合させる形で、誰もが楽しめる「共生社会づくり」を目的とした事業が展開されており、地域包摂型の好事例といえます。※参考:福井県公式

6. まとめ:地方×eスポーツの未来を描くには

eスポーツは、単なる流行や若者向けの娯楽にとどまらず、地方が抱える複合的な課題と向き合うための"実践的なツール"となりつつあります。既存の施設や人材を活かし、地域社会の"つながり"や"活気"を再生させる力を秘めています。

実際に成功している地域では、「なぜこの地域にeスポーツが必要なのか?」という問いに対し、明確な社会的・地域的意義を見いだしています。移住促進、若者の地元定着、空き施設の再活用、観光振興、世代間交流、予防医療──ひとつの取り組みが多面的な価値をもたらす構造が、そこにはあります。

これからの地方創生に求められるのは、分野横断的な連携によって複数の課題を同時に解決していく、"重層的な地域戦略"です。eスポーツは、その中核となり得る存在です。 未来のまちづくりは、画面の中ではなく、画面を通じて人と人をつなぐ"新しい公共空間"をいかに生み出せるかが問われています。 地方×eスポーツの本番は、これからです。

経営学部 准教授 堀川 宣和

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